2018/09/19
平成30年9月7日OMC勉強会レポート
今回は「コミュニケーション困難な患者の緩和ケア」というテーマで、事例検討会を開催しました。日吉慶友クリニックが事例を提案し、川崎市立井田病院の西智弘先生がファシリテーターで進行していきました。医療・介護従事者としてどのように介入していけば良いのか、参加者がグループになり、話し合いました。
【今回の事例】
患者:40代 男性
病名:癌再発
背景:独居、生活保護、キーパーソンの兄 とは疎遠
癌が再発し病院を受診。手術が困難だったため、放射線治療を開始。その後、化学療法を開始し、予後や緩和ケアなどの方向性が決まっていなかったため、疼痛コントロールに関しては日吉慶友クリニック在宅診療部が介入することになった。次第に疼痛が増強し、ADLが低下。本人の治療や生活に対するこだわりが強く、次第に診療を拒否されるようになる。方向性について通院先の病院へ問い合わせするも返答を得られず、訪問看護師が急変時の対応や緩和ケア導入などに関して本人へ確認していた。本人は自身の病状についての理解が乏しく、訪問看護介入中止などの希望もあり、介入困難な状況になっている。
【事例に対して出た意見】
・ご本人が、恐怖と不安で、現実を見るという行為事態がものすごく怖いのではないか。
・いろんなことを調節する人間がいない為、周りの人達が本人に振り回されていてうまく機能していないと思う。
・診察は変わらず継続していくが、こちらが積極的に関わると拒否されてしまうので、相手のタイミングを見つつ、本人が助けてほしいときや辛いときなどに関わりを続けていく。
・兄に介入してもらい、キーパーソンとしての役割を果たしてもらう。
・疼痛コントロールをしっかりする。
・通常患者宅で診療している為、環境を変え診療所へ来てもらい自分の本音や意向を聞き出しやすいようにする。
【援助者としてどのようなアプローチが可能だろうか?】
このような事例の場合、どのようなアプローチを行っていけば良いのか、西先生からは次のような意見がありました。
「意見にも出ていましたが、ご本人が本当に困っていると感じる時までタイミングを待つことが重要です。ご本人が、現在はこの状態で生活することが可能であるなら良いと思いますが、本当に病状や生活が変わって悪くなってしまったら、その時にどうするのかということを、事業所や関わっている私たちが予め考えておくことが必要です。これを、『セーフティーネットを張る』と言います。
医療者はどのタイミングでご本人の状態が変わるかある程度予測できると思うので、いつどこで状態が変わっても柔軟に対応出来るように予測しておきます。 例えば、痛みが増して酷くなり入院しなければいけない、ご飯が食べられなくて入院しなければいけないなどのケースパターンを考えておいて、その時にこちら側がどのように動くかを考えておきます。」
今回の事例は介入が難しいので、問題が起きた時にどうするか考え始めると右往左往してしまいます。そうならないために準備をしておくことが重要です。
問題が起こるまでは、本人の生き方や考え方に付き合って寄り添っていくという形をとる。その寄り添い方が、医療者側からすると必ずしもベストな選択ではないかもしれませんが、繋がりを保ちつつ、水面下で何かあった時の為に他の事業所と連携して対策を進めていくのがいいと思います」
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勉強会後のアンケートでは、「他の医療機関の方の話を聞くことができ、職場での一方的な検討ではない話をすることができた」「在宅療養サイドの意見や困難感を知ることができた」「介入が難しい場合、無理に行うのではなく、本人の考え方を理解しながらできることを行っていく」などのコメントをいただきました。(アンケートの結果はこちら)
次回のOMC勉強会は10月5日(金)19:00〜20:30です。宮城県にある、やまと在宅診療所大崎の院長・大蔵暢先生の講演を予定しています。少しでも興味をお持ちの方は、お気軽にご参加ください。